三隣亡とは

三隣亡(さんりんぼう)とは、土木・建築関係の凶日とされる日で、大安や仏滅のように日の吉凶を表す暦注(れきちゅう)の一つです。
三隣亡の日に土木工事や引っ越しをすると、自分の家を含む三軒隣まで不幸が及ぶという言い伝えがあり、今でも建築業界では日取りを決める際に一定の影響力があります。

一方で、江戸時代に「三輪宝」という吉日が誤って表記されたことで凶日の「三隣亡」が生まれた説もあり、三隣亡は凶日なのか吉日なのか根拠に乏しい日といえます。
そのため、三隣亡をどこまで考慮するか・凶日と捉えるかは個人の考え方によって変わります

三隣亡の由来・歴史

三隣亡の由来ははっきりとは分かっていませんが、江戸時代よりも前の暦注解説書には記載がないため、江戸時代に確立したという説が有力です。

江戸時代の文献には、もともと「三隣亡」は「三輪宝」と書かれ、「屋を建てるのによし」「蔵を建てるのによし」という建築に適した吉日として記されていました
ところが、ある年に暦を編纂した人物が「よし」を「あし」と誤記したことから、「屋立てあし」「蔵立てあし」と伝わるようになったとされています
さらに、凶日であることを示すために「三輪宝」から「三隣亡」に表記が改められたとも伝わりますが、いずれも確証はなく、経緯には諸説あるようです。

山形県だけに「年間三隣亡」「隠れ三隣亡」が根付いている

山形県の庄内地方や最上地方では、「年間三隣亡」や「隠れ三隣亡」という独自の風習が根付いています。

年間三隣亡とは

年間三隣亡とは、その名の通り一年中が三隣亡の年のことで、十二支で寅・午・亥の年とされています
これらの年に家を建てると、「三軒両隣が火事になる」「大工が怪我をする」と考えられており、現在も山形県内の住宅着工に影響を与えています。

年間三隣亡の由来として最も有力なのは、明治時代に山形県内の大工や修験者(山伏)などが、競争相手の営業妨害のために三隣亡を拡大解釈し、「年」の吉凶として広めたという説です。
実際、年間三隣亡の年には、山形県内の住宅着工件数が通常の年と比べて平均15~20%程度減少するというデータがあります。
ただし、年間三隣亡の風習は山形県にしか存在しないため、近隣県で住宅着工件数の減少は起きていません。

少なくとも「一年を通して三隣亡」という考え方に根拠はないため、年間三隣亡を気にしない人もいるようです。

隠れ三隣亡とは

隠れ三隣亡とは、山形県の一部地域に伝わる「暦に載っていないが三隣亡とされる期間」のことで、以下の2つを指すとされています

  1. ①「年間三隣亡」の別名
  2. ②暦の知識がない人が、新暦を見て「三隣亡」の記載がない日・年を「隠れた三隣亡」と誤解したケース

どちらにしても、隠れ三隣亡は日本のどの暦にも記載がない日を指しており、凶日とするには裏付けがないといえるでしょう。

三隣亡はいつ?2025年・2026年のカレンダー

三隣亡は、毎月特定の干支の日に巡ってくる日で、月ごとに三隣亡にあたる十二支が定められています
そのため、毎月必ず三隣亡の日があり、暦の上では以下のように割り当てられています。

  • 1月・4月・7月・10月: 亥(い)の日
  • 2月・5月・8月・11月 : 寅(とら)の日
  • 3月・6月・9月・12月 : 午(うま)の日

なお、三隣亡は、毎月約2~4日間・年間で約30日間あります
2025年・2026年の三隣亡の日は以下の通りです。

2025年の三隣亡カレンダー(11月~)

年月 三隣亡の日付 六曜
2025年11月 14日(金) 先負
26日(水) 仏滅
2025年12月 11日(木) 先勝
23日(火) 友引

2026年の三隣亡カレンダー

年月 三隣亡の日付 六曜
2026年1月 4日(日) 友引
8日(木) 赤口
20日(火) 先勝
2026年2月 1日(日) 先勝
6日(金) 赤口
18日(水) 友引
2026年3月 2日(月) 友引
5日(木) 大安
17日(火) 大安
29日(日) 赤口
2026年4月 14日(火) 仏滅
26日(日) 赤口
2026年5月 13日(水) 大安
25日(月) 赤口
2026年6月 9日(火) 先負
21日(日) 大安
2026年7月 3日(金) 大安
7日(火) 先負
19日(日) 大安
31日(金) 大安
2026年8月 17日(月) 大安
29日(土) 大安
2026年9月 13日(日) 仏滅
25日(金) 仏滅
2026年10月 7日(水) 仏滅
11日(日) 先負
23日(金) 先負
2026年11月 4日(水) 先負
9日(月) 仏滅
21日(土) 仏滅
2026年12月 3日(木) 仏滅
18日(金) 友引
30日(水) 友引

三隣亡にやってはいけないこと

三隣亡は「建築に関わることを避けるべき日」とされるため、建築儀礼・家に関わる行動全般を慎む風習があります。

地鎮祭・上棟式などの建築儀礼

地鎮祭や上棟式は、建築の安全を祈願する大切な儀礼ですが、これらの日取りに三隣亡が重なると不吉とされています。
地鎮祭・上棟式と三隣亡が重なる場合、建築会社も施主と相談して日程をずらすケースが一般的です。

  • 地鎮祭(じちんさい):工事の安全や家の繁栄を願い、家を建てる際に行う祭事
  • 上棟式(じょうとうしき):家の骨組みが完成したことを祝う儀式

引っ越し

三隣亡の引っ越しは、自分の家を含む三軒隣まで不幸を及ぼすとされるため、避けた方がよいとされます。
引っ越しは直接的に建築に関係がないように思えますが、「建築物から建築物への移動」という意味から控えるべきと考えられています。
引っ越し先に暦や縁起を重視する方がいると、「三隣亡に引っ越しをするなんて非常識」と捉えられるかもしれません

ご近所トラブルを防ぐためにも、可能であれば、ご自身や引っ越し業者のスケジュールの範囲内で日取りに気を配っておくと安心です。

家や土地の購入・契約

三隣亡の日に、家を買ったり建築工事の契約を結ぶのは控えた方が安心です
家や土地の購入・契約は人生の中でも重大な決断の一つですので、大安のような縁起の良い日を選んだ方がよいとされます。

とはいえ、建築会社によっては三隣亡を全く意識しないところもあるため、気になる場合は担当者と相談するのがよいでしょう。

高いところに登る

「三隣亡に、高い所へ登るとけがをする」と書いている暦があるため、三隣亡の日に高所作業や屋根に上がるのは避けるべきといわれます。
なぜ暦に「高い所へ登るとけがをする」と書かれているのかは不明ですが、おそらく建築工事の安全確保と関連があるようです。

実際にどこまで気にするかは考え方次第ですが、縁起を担ぐなら三隣亡以外の日程にするのがベストです。

入籍・結婚式

「家庭を築く」「大黒柱になる」という建築に関連する言葉が含まれることから、三隣亡の入籍・結婚式は避けた方が安心とされています。
また、カップル当人は三隣亡の挙式を気にしないものの、縁起を意識する親族への配慮として、日取りを変更するケースもあるようです。

「三隣亡はあくまで建築関係の凶日で、結婚式には関係ない」という捉え方もあるので、周囲の意見や慣習も考慮しながら判断するとよいでしょう。

納車

納車は建築と関係が薄いものの、凶日である三隣亡に行うのは避けた方がいいとされています。
とはいえ、建築に関する行事ほど神経質になる必要はないので、ご自身や周囲の意見を踏まえて日取りを決めるとよいでしょう。

三隣亡と六曜、どちらを優先すべき?

土木や建築の凶日である三隣亡と同様に、日々の吉凶を判断する目安として広く知られているのが六曜(ろくよう)です。
六曜とは、「先勝(せんしょう)」「友引(ともびき)」「先負(せんぶ)」「仏滅(ぶつめつ)」「大安(たいあん)」「赤口(しゃっこう)」の6種類の日柄を指し、とくに冠婚葬祭の日取りを決める際に用いられています。

六曜 概要
先勝(せんしょう)
  • 午前中が吉となる日
  • 商談や契約などの勝負事におすすめ
友引(ともびき)
  • 六曜で2番目に縁起の良い日
  • 祝い事はOK・葬式はNG
先負(せんぶ)
  • 急用を避け、平穏に過ごすのが良い日
  • 勝負事では良い結果が得られない
仏滅(ぶつめつ)
  • 六曜の中で最も縁起が悪い日
  • 結婚式などの祝い事はNG
大安(たいあん)
  • 六曜の中で最も縁起の良い日
  • 何をするにも吉
赤口(しゃっこう)
  • 仏滅の次に縁起が悪い日
  • 火や刃物の取り扱いに注意

カレンダーによっては、三隣亡と六曜が併記されている場合もあり、建築関係の行事・契約を行う際にどちらを優先すべきか迷うこともあるでしょう。
一般的に、六曜の中で最も縁起が良いとされる「大安」であっても、三隣亡と重なる日は建築に関わる契約や儀式は避けたほうが良いといわれています

そのため、建築関連の行事や契約を行う際は、以下2点を満たす日を選ぶと安心です。

  • 三隣亡と重ならない日であること
  • 六曜で「大安」や「友引」などの吉日であること

まとめ:三隣亡を正しく理解して過ごそう

三隣亡は、吉日が誤まって凶日として広まったとされる、建築にまつわる暦注です。
現代では迷信と考える人も多い一方で、地鎮祭や上棟式、家の契約など、人生の節目に関わる日取りでは意識されるケースがあります。

建築や引っ越しなど「住まい」に関する行事を行う際は、三隣亡と六曜の両方を確認し、できるだけ縁起の良い日を選ぶとよいでしょう。
縁起はあくまで目安ですが、後悔のない一日を迎えるための判断材料として、三隣亡を上手に活用してみてください。

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